今年最初で通算5回目となる「第5回 医療と産業の国際交流シンポジウム in 関西」が2014年4月19日、一般社団法人医療国際化推進機構主催、経済産業省近畿経済産業局、大阪府、日本医療機器産業連合会、大阪国際フォーラム、JICA関西、一般社団法人Medical Excellence JAPAN、在大阪ベトナム社会主義共和国総領事館のご後援を賜り、大阪大学中之島センター内、佐治敬三メモリアルホールで開催されました。穀雨を翌日とする春爛漫の土曜の夕刻からの開催にもかかわらず今回も北は東北地区から、南は九州まで、更には海外からのご来訪者を含めて120名を超える多くのご参加者を得て開催することが出来ました。
遠路ご参加の皆様、誠に有難うございました。
2013年に開催の合計4回のシンポジウムでは、具体的な事例を通じて医療及び医療機器産業の海外展開、ビジネス展開、ビジネス戦略立案についての理解を深め、最先端テーマでもある「再生医療の実用化と産業化」、「医療の国際展開への厚生労働省、経済産業省、両省の具体的な取り組み」、又、海外視察(中国、シンガポール・マレーシア)から得られた現地の最新情報を通じ、海外での医療ビジネスの具現化に向けた知恵と経験を参加者の皆様と共に共有させて戴きました。
2014年最初のシンポジウムとなる今回は、日本の成長戦略の要となる医療健康産業についての「ODAと国際協力について」JICA関西国際センター所長築野様からの事例紹介、及び、司令塔を担う内閣府からは大変ご多忙のなかご参加戴きました西村副大臣様から直接、「成長戦略への取り組み」を伺い、会場の参加者の皆様との質疑応答も含めて大変充実したシンポジウムとなりました。素晴らしいご講演を戴きましたお二人の講師の方々に改めましてお礼と感謝を申し上げます。
以下に講演内容を紹介させて戴きます。
1.「日本のODAと医療分野の国際協力~日本の経験・ノウハウを途上国に生かす~」
講演者: 国際協力機構(JICA) 関西国際センター所長 築野 元則 様
国際協力機構(JICA)は、我が国の優れた人材・技術、資金を活用し、開発途上国の貧困削減等の解決に取り組む政府開発援助(ODA)の実施機関です。JICA関西国際センターは、阪神淡路大震災の経験を踏まえた防災と復興の国際協力の拠点として2002年に神戸に開設されましたが、2012年には大阪センターを統合して関西全域を担当するセンターとなり、人材育成のための研修事業、自治体との連携、中小企業支援を通じて関西の経験と知恵を途上国に生かし、関西の活性化に国際協力を通じて貢献しています。
途上国の発展と安定は日本の成長戦略実現のためにも不可欠であり、2013年6月に政府が策定した日本再興戦略でも成長するアジア、戦略的な通商関係の構築と経済連携の推進が目標とされています。その具体的な事例として海外市場獲得のための戦略的な取り組みとして三つの事例が紹介されました。
①日本の高度な技術(橋梁建設技術等)とソフト面のノウハウ(大阪市交通局、東京メトロの地下鉄運営・料金徴収システム等)を合わせた「インフラ・システム」協力として、ベトナムでのハノイ/ホーチミン市都市鉄道およびハノイの橋梁建設の事例
②途上国での健康・医療の改善に日本の中小企業が持つ製品・技術((株)TESS,(株)サラヤでの事例)を生かしたBOP(Base of the Pyramid)ビジネス連携促進調査等、JICAの中小企業支援制度を通じ、ODA事業に中小企業が参加し、具体的なビジネス展開に向けて進み出している事例
③日本の再興戦略の大きな柱となる「医療の国際展開」について、成長著しく、アジア一の親日国のひとつであるベトナムを例に、ホーチミン・チョーライ病院、ハノイ・バックマイ病院およびフエ中央病院という三拠点への資金協力(病棟建設、医療機材)と技術協力(病院管理・看護技術の向上、地域医療指導、管轄地方病院への教育体制構築等)を合わせた協力
また、本年7月に予定の「第3回医療と産業の海外都市視察」でもベトナム訪問に対してJICAが視察先の選定等多大なご支援の申し入れを戴きました。
具体的な事例紹介を含めたご講演を受けて会場の皆様との質疑応答では、途上国での更なる発展に向けた戦略について、社会主義国家ならではの価値観の違いや途上国に進出する際のリスク等々熱のこもった質疑応答が時間一杯行われました。
2.「成長戦略について~医療健康産業・国家戦略特区・TPPなど~」
講演者: 内閣府副大臣 西村 康稔 様
安倍政権が進める金融政策「A」、財政政策「B]、成長戦略「E]でABEnomicsとの評価を受けているが、本年度はABAnomicsとの評価が受けられるように成長戦略に全力で取り組むとの力強い宣言から講演が始まり、成長戦略を具体化する施策の「医療・介護」分野での事例として次の3つの事例をご紹介いただきました。
①社会保障の持続可能性確保と質の高いヘルスケアーサービスの成長産業化への事例として岡山大学から提案のあった地域中核病院(岡大病院、岡山市民病院、岡山労災病院等)と公立病院、民間病院をネットワークで結び、非営利ホールディングカンパニー型法人制度を活用した個別最適から全体最適を目指す事例
②国民皆保険の理念を踏まえつつ多様な患者ニーズの充足、医療産業の競争力強化を目指すいわゆる「混合診療」の拡大、公的保険外のサービス産業の活性化(事例として健康管理に努力して取り組むところと出来ていないところとの差別化案等)
③再生医療の実用化でも日本は基礎技術のレベルは高いが実用化では遅れているとの批判に対し安全な再生医療を迅速かつ円滑に、多くの製品をより早くを支える制度的な枠組みへの取り組み事例
その後、社会保障の重点化・効率化を進めるために世界最高水準のIT技術を活用した社会を実現するために2016年度から導入されるマイナンバーによる行政サービスの効率化、ビッグデータ活用促進のための法整備、日本全体での研究開発体制の全体最適を目指す日本医療研究開発機構設立の意義、関西圏が医療等イノベーション拠点として指定された国家戦略特区の意義ならびに新たな提案を何時でも受け入れる国の姿勢をご紹介戴きました。
その他成長戦略の実現を支えるベンチャー支援制度、グローバルに成長を求める企業を支えるエクイティー供給主体の有り方、地域経済活性化支援機構の概要、農業の6次産業化へのプロジェクト支援、TPPへの参加がもたらす新しい時代に向けた国際経済ルール作りが日本経済に与える効果等成長戦略の核となる部分を幅広くご紹介戴きました。
質疑応答でも特区規制緩和に対する提案、ビッグデータと個人情報の取り扱い等々意義深い議論が行われました。古き良き時代の良いところを生かし、新しい時代の価値観へ迅速にシフトする重要性をご講演を通じて強調されていたことが非常に強く印象に残る素晴らしい講演でした。
引き続き行なわれました「情報交換会」でも西村副大臣様、築野JICA関西国際センター所長様、吉川理事長、浮舟副理事長をはじめシンポジウムご参加の皆様と活発な意見交換と相互交流が行なわれました。
第6回シンポジウムも産業界、関係省庁、医療各界の優れた講師の方々からご講演戴き、グローバルに成長する医療健康産業のご検討に役立つ視点、知見、先端事例等をご紹介する予定です。次回もご期待ください。そして是非ご参加ください。
(文責:医療国際化推進機構 理事 金田 治)