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「第4回 医療と産業の国際交流シンポジウム in関西」開催

2013年12月14日、一般社団法人医療国際化推進機構主催、経済産業省近畿経済産業局、在大阪ベトナム社会主義共和国総領事館、一般社団法人Medical Excellence JAPAN、日本医療機器産業連合会のご後援を賜り、「第4回 医療と産業の国際交流シンポジウム in 関西」が大阪大学 中之島センター内、佐治敬三メモリアルホールで開催されました。真冬の厳しい寒さの土曜日の夕方からの開催にもかかわらず北は北海道から、南は九州まで全国各地から100名を超える多くのご参加者を得て開催することが出来ました。遠路ご参加の皆様、誠に有難うございました。

2013年に開催の第1回(1月)、第2回(5月)、第3回(9月)シンポジウムでは、医療の海外事業展開を実際に行っている皆様からの「事業成功のポイントと具体的なビジネスモデル」について、これからの医療国際化に向けたビジネス展開、ビジネス戦略の立案に役立てていただくための「国主導と民間主導の協力体制」、「医療特区の進展状況」について、医療の最先端テーマである「再生医療の実用化と産業化」、「医療国際協力の現状」、又、NHK「クローズアップ現代」でもご紹介されました「総合検診車を使った医療産業の海外展開」等についてご講演戴き、参加者の皆様との活発な質疑応答を含めて議論を深めてまいりました。

今回は更に進めて「医療の国際展開について厚生労働省の取り組み」について、「医療機器の海外展開に向けた取り組み」について、及び11月に実施しました「シンガポール・マレーシア海外視察」から得た現地の最新情報をそれぞれご紹介戴きました。これからの医療国際化、海外での医療ビジネスの具現化に向けて、それぞれ知恵と経験に裏打ちされた大変示唆に富む素晴らしいご講演となりました。今回も幅広いテーマで尚且つ参加者の関心も非常に高いこともあって時間一杯活用した講演となりました、素晴らしいご講演を戴きました講師の皆様方に改めましてお礼を申し上げます。

以下に講演内容を紹介させて戴きます。

1.「厚生労働省における医療の国際展開に向けた取組等」

講演者: 厚生労働省 医政局 医療統括管理官 佐原 康之様

医療の国際展開は、安倍内閣総理大臣と官邸の健康・医療戦略室のリーダーシップの下、関係省庁が一体となって推進中であること、うち、厚生労働省が主に、新興市場等各国の保健省との協力関係を樹立すべく取り組んでいること。協力の具体的な内容として、次のような活動テーマがあることをご紹介戴きました

① 我が国の先端医療についての技術移転、優秀な医療機器や医薬品についての紹介・
相手国政府調達における官民一体のトップセールス。

② 国民皆保険を実現した我が国の公的医療保険制度についての経験の移転。

③ 医薬品や医療機器の開発から承認に至るプロセスについての相互理解の促進。

続いて具体的な取り組み事例としてアセアン各国、バーレーン、カタールなどの中東諸国、ロシア、ブラジル等での状況が紹介されました。カンボジアの「国立母子保健センター」は、日本の国立国際医療研究センターの長年の協力活動を通じて、乳幼児の死亡率が半減するといった大きな成果を挙げてきたこと。及びそれら協力をリードしたのが医師の江上由里子さんを始めとする日本女性であり、女性の活躍は良い社会を作る原動力になるとの安倍総理のご発言も紹介されました。

その他ユニバーサル・ヘルス・カバレージ(UHC)、外国人患者受け入れ医療機関の整備等幅広く厚生労働省の取り組みの現状をご講演戴きました。

2.「医療機器産業の海外展開に向けた取り組みについて」

講演者: 日本医療機器産業連合会 会長・テルモ株式会社 代表取締役会長 中尾 浩治様

日本医療機器産業連合会は加盟19団体で構成され、売上高が2兆3000億円、就業者数が約12万人、医療健康産業全体では自動車産業の545万人を超える730万人と最大の就業者数を数える産業であり、医療関連産業の市場規模も今の12兆円から2020年には16兆円に拡大し、医療機器の特性を踏まえた医薬品・医療機器等法が今年11月に公布され承認プロセスの迅速化が期待され、今後は医療機器の輸出促進と国際競争力強化に向けた取り組みが更に進むことをご紹介戴きました。

人口の高齢化は日本のみならず世界共通のテーマとなっており、医療機器のテクノロジーの進化の事例として画像診断、切らずに癌を治す非侵襲治療、カテーテル、ステントに代表される低侵襲治療が紹介されました。海外展開に向けても発展段階として5段階あることと、テルモ株式会社の場合は既に現地販売会社が直接現地病院と取引を行なう最終段階である5段階に来ているとのこと。今後とも医療機器産業が世界で活躍、発展するためには「物つくり+付加価値+事業化」いわゆる「ことつくり」(イノベーション)が最も大切であることを事例を含めてご講演戴きました。

3.「シンガポール&マレーシア 医療と産業の海外都市視察報告」

今年11月6日~9日の日程で開催された「シンガポール&マレーシア 医療と産業の海外都市視察」に関連するテーマで、3名の講師からご講演戴きました。

3-1.「シンガポールの病院建設」

講演者:五洋建設株式会社 建設部門 建築営業本部 営業部長 高賀茂 洋史様

シンガポールの基本情報として、ほぼ淡路島と同じ国土に福岡県を上回る約535万人が生活する「小さな経済大国」で、2010年に9.2%であった人口高齢化率が2030年には27.5%へと急上昇が予想され、産業としての医療への取り組みが進んでいることを紹介されました。その先進的な事例として五洋建設(株)が施工された全病室個室の医療ツーリズムに対応する富裕層向けのマウントエリザベス・ノビナ民間病院、ならびに先端医療に対応した外来診察機能と研修研究機能を有する国立大学病院(NUH)メディカルセンター、患者が選択できるグレード分けした病室を有するチャンギ総合病院の施設概要をご紹介戴きました。

3-2.「イスカンダル・マレーシア開発」

講演者:三井物産株式会社 環境・新エネルギー事業部 次長 谷垣 匡輝様

マレーシアで進むイスカンダル開発計画の概要と、三井物産(株)が関与されているメディニ地区の開発についてご講演戴きました。

イスカンダルは、東京都とほぼ同じ面積という大規模な地域開発であり、シンガポールとの国境近郊であるという優位性を活かした開発が進んでいるとのこと。同地域では、付加価値の高い産業の育成・誘致に注力し、教育、観光、クリエイティブ、金融等と共にヘルスケア事業も対象となっており、外資の進出に対しても積極的との御説明でした。

その中でもメディニ地区は、新規開発の中核・呼び水と位置付けられており、更に厚い優遇政策が採られています。ヘルスケア分野では、三井物産が出資参画するIHHヘルスケア傘下のグレンイーグルス病院が建設中。三井物産は、メディニ地区に於いて、不動産開発、電力や水等のインフラ・情報通信網整備、サービス事業展開等の街づくりの様々な段階・要素に広く長く関与すべく、同地区のディベロッパーに出資参画し、スマートシティの開発を検討している旨、御紹介が有りました。スマートシティの基盤が整えば、ヘルスケア分野への情報通信網の活用に加えて、教育、観光、産業等との連携に繋がる可能性も有るとの由。

3-3.「バイオポリス、タントックセン病院 、デュークメディカルスクールを視察して」

講演者:一般社団法人医療国際化推進機構 副理事長・滋慶学園グループ総長 浮舟 邦彦様

シンガポールは天然資源を持たない小国であり人的資源の強化に力を入れている。一方、人口高齢化率は65歳以上の人口を何人の生産年齢人口で支えるのか、2012年に1:5.9であったが2030年には1:2.1となり日本よりも急速な高齢化が予想されている。政府は移民の受け入れと併せ教育を産業と位置付け強化していく政策は、日本でも一考に価する。例えばデューク-NUSでは独自のTeam-Based Learning(TBL)である「チームLEAD」(Learn、Engage、Apply、Develop)を活用して教育効果を高めている現状と卒業生、留学生には決められた期間シンガポールで就業することが義務付けられていること等が紹介されました。

タントックセン病院の事例では、日本のような健康保険制度が無く自由診療制で運営されていることから患者が主体となって病院、医師を選択する様子を、また、バイオポリスの事例では多くの日本企業が進出している実情とバイオメディカルを成長分野と位置付けアジアのハブにするというシンガポール政府の取り組みが紹介されました。

引き続き行なわれました情報交換会でも講師の皆様、吉川理事長、浮舟副理事長をはじめシンポジウムご参加の皆様と活発な意見交換と相互交流が行なわれました。

次回の第5回シンポジウムは2014年3月を予定しております。次回も関係省庁、産業界、医療各界の優れた講師の方々にご講演戴き、ますますグローバルに発展する医療健康産業の新しい時代に向けた視点、知見、先端事例等をご紹介する予定で準備を進めています。講師と参加者の智慧の双発からイノベーションが生まれ、日本と世界の医療健康産業と健康な社会づくりを関西から発信する“創造の場”になることを期待します。次回もぜひご参加下さい。

(文責  医療国際化推進機構 理事 金田 治)